聞かせて!パン屋さん

第3回『某パンメーカー開発担当、直撃インタビュー! /袋パンは何故カビない??


袋パンは何故カビないのか???そんな素朴な疑問に答えてくれるべく
某有名パンメーカー開発担当A氏が赤裸々に語ってくれましたーー!!!
さてさて、かなり直撃なこのインタビューにメーカーはどんな回答を
返してくるのか?いつものぱんふぉらしからぬ難しいお話が続きますが、
袋パンを通して食=iあるいはもっと大きなテーマかもしれない)改めて考え直す
いいきっかけとなるのではと思います。是非みんなに読んで頂き、一緒に考えてほしい。


●某有名パンメーカー開発担当A氏とは
・某大学で農芸化学(現在で言う応用生命科学)を学ぶ。
・現在は某パンメーカーの研究室に勤務。
なんと!農学博士でもある。
・子供の頃からパン好きである。

●今回ぱんふぉがぶつけた主な3つのテーマ
@ズバリ!袋パンは何故カビないのか?
Aなんだか怪しげイーストフードっていったい何??
B乳化剤は何のために使っているの???


Q:何故、最近の袋パンはカビないのでしょうか?
理由は2つあります。
1つは、徹底した衛生管理と異物混入防止を中心にした安全対策を徹底しているからです。衛生対策が必要な部署にはかなりのお金を投資しています。ここ数年日本の製パン業界が死にものぐるいでやってきて、現在も少しずつ進めていることを皆さんに知っていただきたいと思います。またこれが出来るかどうかが、今後の企業競争力の一つの鍵だと思います。
作業員は作業場に入る前に、
1、清潔なユニフォームに着替える。
2、靴も外履きから専用の靴に履き替える。
3、髪の毛が落ちないようヘアネットと帽子をかぶる。(ヘアネットは髪の毛が落ちないように磁性を持たせた特殊なタイプ)
4、鏡を見てチェック。
5、粘着ローラーでユニフォームについているものを完全に取り除く。
6、石けんで手をあらい、更に消毒する。
7、最終的に除菌室に入り、エアーを受ける。(ここを通らないと製造現場に入れません)
空調換気設備も、工場内に外部からの空気が入りにくいように工夫しています。
また、焼き上がったパンには絶対に人の手が触れないように、製造ラインを作って管理しています。パンが直接ふれる装置は、一日のうち何回も定期的にアルコール洗浄しています。

2つ目の理由は発酵を管理する技術力です。
カビの抑制に一番有効なのはアルコールです。イーストの発酵を適度に調節してやることで、おいしさの点からもカビ抑制の点からも充分なアルコールを造り出すことができます。
また、自家製の酵母(いわゆる「天然酵母」)にも含まれる乳酸菌も利用しています。これらの技術開発は、基本的にヨーロッパの伝統的な製パン技術を科学的に解析した結果生まれたものです。ヨーロッパの伝統的な固いパンのなかには、何週間もカビが生えず長期の旅行に携行出来るものがあるのはご存知かと思います。このため安全上は問題ないと自信を持って言えます。


Q:食パンについて一番気になるのは添加物ですが、イーストフードとは何ですか?

文字どおり、『イーストが食べる為の栄養源』
パン生地は微生物であるイースト(酵母)の活動の結果発生する、二酸化炭素、アルコールなどの発酵生成物でふっくらと膨らみます。イーストが安定した活動するためには、様々な栄養源が必要です。そのためイーストフード中には、各種のミネラル、小麦粉中の澱粉から糖質(イーストにとっては主食)を切り出す酵素(麦芽や麹カビなどから抽出したもの)などが入っています。また、イーストの活動の結果生じた二酸化炭素を、効率よく生地中に封じ込め、オーブン内で加熱したときに膨らませてやるために必要な、生地物性の調整を目的としてビタミンCも入っています。一部の酵素にも、この生地物性を調節する働きがあります。

ちなみに、イーストとは「酵母」のことで科学的には同じものを指します。近年話題になっている「天然酵母」という呼び方には、その一方で「人工酵母」という、まるで「人造人間」みたいなものが現実にあるかのような言い方に聞こえ、抵抗を感じます。どちらも自然界のもの。
天然酵母は『自家製酵母』と言い換えた方が当てはまるでしょう。天然酵母(自家製酵母)の方が良いように思われているが、野菜や果物から作られる酵母やバクテリアの中には毒性の強い物質を作るものもあります。ほとんどの場合は問題はないでしょうが、十分注意する必要はあるでしょう。

Q:では乳化剤とは?何の為に使っているのですか?
乳化とは簡単に言うと、水分と脂質(水と油)を混合したときに、ある程度以上安定した状態(たとえばマヨネーズのような)を指し、乳化剤とはこれを安定させる機能を持つ物質の総称です。
乳化剤をパン生地に添加する目的は大別すると2つです。
1つはパンをソフトにする為で、水分をどれだけ多く含んでいるか(保水性)が問題となってきます。焼きたてのパンをその日のうちに消費してしまうのならばあまり必要はないでしょうが2〜3日後もおいしく食べていただくための、ソフトさを維持(保水)する乳化剤が有効です。ただし、パンのソフトさを生み出す要因はなんといっても、発酵条件・設備の調節と、中種法(↓〜ちょっとブレイク〜を参照!)であり、乳化剤はこれを長期間維持する手伝いをしているだけです。
2つ目は、機械的にパンを作るときこの乳化剤の添加により生地の傷みが少なくなります。このため、一度に大量のパンを作る大手メーカーではパン用の乳化剤を利用することが多いのです。

ちなみに人間を始め動物の小腸では必須栄養素である脂質を吸収するために乳化剤が作られ、これが脂質と結合して小腸の膜を通過します。我々人間も、もともと体内に乳化剤を作る機能を持っています。
人体はその8割が水で構成されていますが、ここに油分をとりこむためには、水と油を安定させてから分解する必要があります。小腸内の乳化剤成分はおそらくこのために存在するのではないでしょうか。


Q:科学的(工業的)に作られた乳化剤と体内で生成される乳化剤は違うのでしょうか?

製パン用に使われているほとんどの乳化剤は、構造的に同じものです。そうでないものもまれにありますが、基本構造は同じです。また機能的にも同じです。食品に含まれる量と体内で生成される量の違いはあるでしょうが、さして問題になるとは思えません。脂質を多く含む食品(加工食品に限らず天然物でも)にはほとんどの場合この乳化剤(あるいは同等の成分)が含まれています。
乳化剤は他の原料に比べ舌の味蕾細胞との結着が速いと思われ、量が多いと味に違和感を感じてしまう。乳化剤の量を出来るだけ少なくし、ソフトさと水分を保てるよう研究しています。
また、大量の生地(こちら某パンメーカーでは1000斤分(生地にするための小麦粉で250〜300kgとのこと!凄い量ですね、想像できません・・・)を一度に扱う場合、分割の段階で最初と最後では15分の時間差があり、その時間差を埋める(品質の均一化)点でも有効。家庭で使われないのは少量の生地でパンを作るからで、大量の生地で均一のパンを作るのにはいろんな技術や製法が必要となる。
また、プロである我々が求める均一な品質とは、かなり厳しい次元の話になります。


〜ちょっとブレイク〜

Q:最近よく聞く中種法とは?
通常家庭でパンを作る場合要する時間は3時間弱くらいですが、中種法では焼き上がりまで8時間くらいかかります。二段階にわけてパン生地を作り(生地の一部を先にこねて発酵種とするやり方)じっくりと発酵させるのです。また300キロの生地を扱うことにより、より多くの水分を取り込むことができ、より柔らかいパンができるのです。

Q:どのくらい日持ちするのですか?

20℃くらいの常温で未開封であれば1週間くらいはカビが生えない。
開封しても清潔な手でパンを取り出した場合5日程度は生えてこない、実験でカビの胞子を植え付けても3日くらいは大丈夫でした。但し、安全のため賞味期限は3日としています。

Q:パンの保存方法について教えてください。

常温に置いておくよりは、やはり冷凍保存が良いです。固くなるという点では冷蔵庫保存が一番早く固くなります。何年も前から冷凍保存に適した包装の開発について提案しているが、コストがかかるのでそれを削減する技術力が今後必要とされますね。


Q:今回のインタビューを通してAさんが一番伝えたいことは?
パン屋に限らず、大手メーカーが安全性に疑問のある化合物を用い、企業の利益だけを考えた、食品としていい加減なものを作っている訳ではないことを消費者の皆さんに分かってほしい。今から30〜40年ほど前ならともかく、そのようなものが市場で受け入れられるほど、現在の日本の消費者や、食品を取り巻く様々な環境は未成熟ではありません。 たしかにいくつかの食品添加物については10年、20年食べ続けてどうか?といった実験結果はありません。しかし、それを行なうことは現実には不可能です。
また科学者として実証していないことを公で発表することはできないので、(このような話を)誰も責任のある立場では話しません。逆に「危ないかもしれない」 という論調は非常に話しやすいし、危なくなかったところで責任は問われない。私に言わせればマスコミの態度はすべからくこう見えます。

かつては、よくパン職人は『寝ずに働く』といった話があり、それは美学・美談だと思うが、果たしてその職人やその家族は幸せだろうか?それをうめていく技術力は決して悪いことではないと思います。

以前から、本日お話した内容を広く世の中に伝えたいという思いはあり、一部内容についてはシンポジウムを開こうと試みたこともあったが、同じ業種の会社の枠を超えてというのはなかなか難しい。
(消費者としては添加物に関する知識がないし、今回お話頂いたような内容を発表頂かないと、やはり袋パンは体によくないという風評は変わっていかないと思うと意見したところ・・・・・)
ただ、現在の動向/自然志向が強まり、添加物や遺伝子組み換え食品などを極端に危険視するマスコミなどの影響もあり、厚生労働省・農水省からの規制など、今後動きがありそう。そうなってくれれば企業としても腰をあげることとなるでしょう。


●インタビューを終えて・・・
今回の某パンメーカー開発担当Aさんとお話できたことはぱんふぉメンバーにとって非常によい経験となりました。企業として日夜いろいろな研究をし、よりよい製品を作るために努力しておられるのが伝わりました。
後日ネット検索したところ、塩化アンモニウムなど16品目の食品添加物は「イーストフード」という一括名の表示が認められているということ記載をみつけました。食品添加物に関する知識がないだけにやはりまだ心配な面があります。

http://www.cfqlcs.go.jp/administrative_information/public_relations_magazine/question_and_answer_of_food/qa68.htm
(農林水産消費技術センターホームページより)

情報が溢れている昨今、マスコミで問題になっているからと一方の意見にただ同調するのではなく、消費者側ももっと勉強し、自分の目で選択していかなければいけないと強く思いました。

   ★ はみ出しコラム ★                            へぇ〜へぇ〜へぇ〜
余談ですが、インタビューの中で面白かったお話しを少しご紹介・・・・
■某パンメーカーのあんぱんやメロンパンはすべて手作業にて餡包みなどをしている。(作業を見てみたい!(^○^))
■あんぱんの餡の量は関東より関西のほうが多い。(関西人は食い意地がはっているのか?!)
■個人的に好きなパンのタイプは紀伊国屋のプンパニッケル。(レバーペーストを塗ってビールのつまみに….。Aさんはなかなかのグルメ??)
■ 某パンメーカーで製品開発に関わる方々は毎日パンの試食をしているため、血糖値が高め。。。
■ 美味しいパンを求めて海外へ旅行するならお勧めは、発酵乳製品・生ハムなどの熟成した畜肉製品のおいしいところ。例えば、スペイン・イタリア・ドイツ・アルプス・ベルギーなど。