聞かせて!パン屋さん

第4回
『パティスリーマディ 代官山(東京・代官山)』


代官山のおしゃれなパン屋さんマディ。
若手シェフブーランジェ松原さんは現在36歳。
ぱんふぉメンバーの中には同年代もおり、
同年代の男性がどんなことを思い、考え、お仕事をされているのか?
とても興味津々で出かけました。さてさてどんなインタビューになるやら・・・


〜おしゃれな街のシェフブーランジェ松原さんとはどんな人?〜

●松原裕吉シェフのこれまでの経歴●
1968年 兵庫県生まれ。高校を卒業して2年の約束で実家の織物業を手伝う。
1988年 上京し、木村屋に入る。あんパン・デニッシュ・ハード系といろいろな
担当を経験。
1997年 渡仏。パリのブーランジェリー「140」オー・ソン・キャラントで修行。
1998年 カフェ マディ大阪店のオープン(3月)に合わせて帰国。
同年9月パティスリー代官山もオープン。シェフブーランジェに就任。

―パン屋さんになったのはオフクロがパン屋さんがいいじゃないのっと言ったから?!

パンふぉ:雑誌で幼い頃からパン屋になりたいと思ってた書いてあったのをみましたが・・・
マディ松原さん:ぜんぜん。(一同爆笑)
パンふぉ:(え?またまたのっけから予想外の答え(*_*))・・・ではなんでパン屋さんになったんですか?
松原さん:オフクロがパン屋さんがいいんじゃないのっと言ったから。
パンふぉ:でもパンは好きだった?
松原さん:
ぱんは食ってましたね。ただハード系のパンとかじゃなくて菓子パン。朝菓子パン食べて、みたいな。ガッコ行ったり。えー、パンは食べてましたけどあとは袋パンですね。ほんとにフランスパンを食べていうようなことはなかったですからね。たまたまおばちゃんが神戸にいたんでドンクのバケットにバター塗って焼いてくれて。うまいなっハイカラなものがあるって感じ。って思いましたけど。



例えばやきそばパンだって構わない。お客さんが喜んでくれんだったら、それが一番。

パンふぉ:パン屋さんってこだわりを持っている部分がある思うんですけど、こういうところこだわってるという所がありますか?
松原さん:
ん・・・こだわりですか・・・・・・うーーーん・・・ないです。
パンふぉ:特に粉にこだわってますとか、素材にこだわってこういうもの使うようにしていますとか・・・?
松原さん:
ん・・・まあ。使いたいなってのはあるんっすけど、だからって・・・いや最終的にはお客さんが喜んでくれればそれでいいから例えばやきそばパンだって構わない。やんないけどね。お客さんが喜んでくれんだったら、それが一番。
パンふぉ:でもここは自信があるとか、こういう特徴を打ち出しているとかは?
松原さん:
そうですね。ケーキとパンが一緒に並んでいる分、同じレベルでキレイに仕上げたり、丁寧に仕上げて見せるというか、わりと最近年配の男性の方とか来て頂けるんですけど、当初やっぱり若い女性が圧倒的だったんですね。だからやっぱり、すごく食べるものって『目から食べる』かな。目からっていうか、(少し照れ笑い)『視覚的な部分から食べる』ので、まあ中段にデニッシュを置いているんですけど、視覚的に色があってキレイに作りこんだりってことが結構大切だなって思います。
パンふぉ:そうですね。整然としていて、すごくキレイでブティックのようですね。
松原さん:
ブティックというか、親会社がアパレルなんですよ。それでファッションでものごとを見るというか・・・
パンふぉ:そうかも。洋服のディスプレイに似た感じかもしれない。
松原さん:
そこまでいうと言いすぎなんですけど(一同爆笑)なんか、キレイな感じは出していきたい・・・
パンふぉ:ビジュアルに凝ってる?
松原さん:
そうですね。やることとしては結構簡単なんですけど、例えばピスタチオでもパアーっと降るんじゃなくて、薄く切ったやつを細い線1本で飾ってあげると繊細に見えたりとかいうことなんですよ実は。粉糖をバアーーっと降っちゃえば真っ白な粉だらけになるけど、その焼けたところと、粉糖がかかっているところの頃合というか。かけ具合で違ってくるというか・・・・
1個1個作り込むのを丁寧というか、
そういうことができるといろんなことで気は使える人間になるというか、僕だけが作るわけではなくスタッフ全員作るんで、そういったことがいつもより少しずれていることを言ってあげることによって気をつけると、それが当たり前の意識になると物を作るってことがもっと大切というか、繊細に気を使ってってことになるんじゃないのかなって・・・これぐらいでいいよとか、こんな感じでいいよとかなるとその幅って意外とアバウトで人が多くなればなるほど伝わりにくいものだから、大切にして行きたいってのはある。(最後の言葉をちょっと照れもあってかこっそりと言っておられますがとても素晴らしい、しっかりしと考えをお持ちです。)
パンふぉ:こういう繊細なパンは松原シェフがやりたいこと?それとも会社の方針にちょっと合わせている?
松原さん:いや、会社の方針というのは実は特にないんですよ。パンを得意としているわけではないし、それがダメとは言わない。それに僕もほんとはそんなに細かい人間ではないですよ。
パンふぉ:木村屋さんはどちらかというと大衆的なパン屋さんですよね。フランスでそれが培われた?
松原さん:いろんなものを見たの。休みは歩いていろんなものを見たし、街を見たし、人を見たし・・・やっぱりどっか吸収されているものはあるね。ただパンを覚え、まあパン屋に入ったんですけど、ただパンを覚えたいなと思って入ったわけではなく、住みたいなと思っただけだったので、あんまりパンがスゴイなという意識は始めからもってた訳でもなかったんで。食べておいしいなっと思ったんですけど、あーいう環境だからおいしくて、実は材料がおいしくて、石灰分の多い水がパンによく合ってとか、風土・気候が合っててというのがあっておいしいと俺は思ったんですよね。作りこみの技術は日本はそんなに負けている訳ではないと思ってるんで・・・むしろやっぱ日本の方がやっぱ丁寧には作ってるって思いますから・・・だから・・・まあ見るものはすごく新鮮だったし、『ああ。これが長い歴史を持ったものだな』っというのはそれはすごい肌で感じられ、良かったと思うんですけど。


ー日本のパンは進化していく・・・ー

パンふぉ:お店の一番人気のパンはどれですか?

松原さん:
人気はデニッシュですかね。どれがっていうワンアイテムはないですね。ただルブッシュっていう上の棚のものですね。あとリュスティックと。相対的にいうとデニッシュ系がでますね。
パンふぉ:ではお客様の人気とは別にシェフが一番お薦めしたいものは?
松原さん:
やはりリュスティックが一番。あと、このルブッシュというくるみとフランス産の小麦をつかったちょっとねじってある棒のようなパン。あとル・パン・ジャポネという、これは多分他の人は作らない。テレビチャンピオンに出した時『こんなパンつくっちゃった』と思いました。でも食べて重たいという感じはあんまりないです。今年それのレンジバージョンで『胡桃のコンテスト』に出すんですよ。毎年胡桃≠ニレーズン≠ニクリームチーズ≠ニかあって、この間レーズン≠ヘ出して1位とって、今度は本選。
パンふぉ:それはいつ?
19日にあって、勝てばアメリカで本大会。
パンふぉ:アメリカ行きたいですか?
松原さん:アメリカ1回行ったんですよ。そのコンテストで賞とって。で、今回1回賞をとった人は鉄人部門というのがあって鉄人大賞というのを取ればアメリカの本選に・・・そこでまた7カ国で対戦する。
パンふぉ:(へーーー。すごい!)先日パン国際大会があって
そこで日本の方が優勝しましたよね。
松原さん:
クープ・デュ・モンド(べーカリー・ワールドカップ)ですよね。次回もかなり強力な方ででるとか。
パンふぉ:わりと欧米の方は伝統的なパンを作り続けるって感じで、それは素晴らしいんですが、日本はどちらかと言えば創作的なパンというか・・・
松原さん:そうですね。そうですね。そうですね。
進化していきますね
パンふぉ:勝てればいいですね。
松原さん:
勝てればいいですね。
★後日松原さんから『レーズンのコンテストで賞を頂き、アメリカに8月13日から10日間いく事になりました。ただし本大会では補欠です。大会には、神戸屋の渡辺さんが出場されます。』っと報告を頂きました!すばらしい!★


すごく恥ずかしくて、悔しくて・・・。ほんと死にたいなっと思いましたね。冗談じゃなくて、ホント・・・ー

パンふぉ:生まれ変わったらまたパン屋さんになりたいですか?
松原さん:
あ。思いますよ。
ただなんでこーゆー風になったかたというと商売しようと思ったって言ったじゃないですか。うーん。商売するためには売れないとダメですよね。しっかり美味しいものが作れないとダメだという風に思ったんですね。でー人より美味しいものが作れる=職場の人間よりも自分が技術がないとダメですよね。となりのヤツに負けたくないと思って、そういった自分。
負けたくない。負けるのは好きじゃない。
だからコンテストとかに出すんですよ。比べようがないじゃないですか現場の中で。コンテストに出るようになってから目に見えて分かった。そーすると、よその店の人とも要は競う訳なんで。自分の職場の中の能力がたいしたことないとか、分かる。それからです。よその人がこーゆーことやってるから、もっとより繊細にして行こうとか、ディテールにこだわって・・・・
パンふぉ:そんな中で結構辛かったなあとかありましたか?
松原さん:
辛いことですか。辛いことありますねー。
辛かったことはですね。
MADU入って一番辛かったですね。

パンふぉ:それは入りたての時ですか?
松原さん:
MADUに入って、恥ずかしながら言うと木村屋って8年いて、できるようになったと思っていたのは自分だけであって実はそうではなかったということなんですけれども。引き出しがないんですね。まあ。そこのパンは作れるし、でもパンっていろんな多様性があって、多面性があるじゃないですか、それがなかなか作り得る能力がなかったという・・・できると思っていたんですけど、なかなか思い描いたものってできなくて。なんかそのシェフであるってことはパンが作れるのはあたり前おいしいものが作れるのはあたり前で、人の管理だとか、係数の管理だとか、当然求められる。その辺がやはり、実は素人だったということをまざまざと桜井シェフ(カフェマディ(現フラウラ)のパティシエを務める桜井修一オーナー)に教えられましたね。
『死にたいな』っと思いました。情けなくて、人に負けたくないっと思って頑張って来たけど何も自分は知らなかったんだっていうことに・・・プライドだけが高くなっちゃってて28か29で、えらそーになってしまってたのに、いざさあやってみな。って言われた時に、わからないという自分がいて・・・。それがすごく恥ずかしくて、悔しくて・・・。ほんと死にたいなっと思いましたね。冗談じゃなくて、ホント車轢いてくんないかなぐらいの勢いで・・・ちょっと鬱っていうか、ノイローゼっていうか・・・

パンふぉ:そこから立ち直って行けたのは何故ですか?
松原さん:
なんですかね。やっぱり時間。
一瞬その時に落ち込むことはあるんですけど、なんか1つでもクリアされると、人が僕の作るものを理解してくれて、それが回るようになると、ホッとするじゃないですか。そーゆー風な時間があって、みんながそれぞれ成長している訳で、やっぱり恥ずかしいと思ったことはなんかどっかでクリアしていくことで自分でも勉強をしていく。頑張っていることによって、「こーゆー風にすればいいじゃん。」って感じで桜井シェフもひっぱり上げてくれたというか。それから一番は、自分が作るパンをお客さんが買ってくれて売れるっていうのが一番ありがたかった。それだけで自信になるっていうか。自分の作るものが評価されるってのは大阪のお店が始めてだったわけで・・・ケーキよりも売れてくれて良かった。
パンふぉ:木村屋を出たことによって打ちのめされたけれども、自分はこんなもんだ。っと分かって、よい転機になった??
松原さん:
うん。今そのままいってたらコワイですね。でもあの辛さは二度と嫌だなと思うから、そこまで落ちないように頑張ろうと思います。ホントきついですから。なんか自信持ってやってきたことが、プライド持ってやってきた人間が何もできないっていうのに気づいて・・・でも、もう人はついて来ているって・・・そんときは、もう居たたまれないですね。
今よく若手のシェフいらっしゃるじゃないですか。26とか27とか、まあ料理とかでも。すっごいなあと思いますね。
パンふぉ:結構若い方多いですよね。
松原さん:うん。やっぱその若手に業界の方も注目してるし、感性もすごくいいから。俺なんかスゴイと思うのが作り出すものがどーこーじゃなくて『シェフとしてやれる人間としてのキャパシティ』がスゴイなあっと思いますね。
パンふぉ:自分のところ以外のパンを食べることはありますか?好きなところありますか?
松原さん:好きなところ・・・うーーーん。どこだろうなあ・・・。食べてみたいなっと思うのは、高橋くん(ブノワトン)とこのパンとか、西川さん(コムシノア)のパンとか・・・。まあ。あと志賀さん(ペルティエ)のパンとか。店のパンではなくて、誰々が作るパン。


パン屋さんの店を持つっていうのは夢ではなく、目標・・・夢はぜんぜん違うところにある。―

パンふぉ:将来はやっぱり独立したいですか?

松原さん:29、30のときは100%独立したいと思ってましたね。

パンふぉ:目標があるから頑張れる?
松原さん:
あー。うーーん。今はそれがすごい目標ではない、夢ではないので。まあなんか店を出すこともあり得るかなぐらい。で、実は独立しちゃうと、ちょっと世界観を、今まで自分が思っていた『商売』っていうのにベタっと入りこまないといけないかなっという気もなにかしてて・・・例えば企業のなかでやると、作りたいものを作り出せるという喜びがあるけど、どっかその独立しちゃうと『商売重視』しないと。まあ僕も自分で独立したら、結構商売の方に傾こうとしようとすると思うんですよ。やっぱリスクの面で誰も負ってくれない訳だからうーーん・・・
パンふぉ:考え方によっては独立した方がやりたいことができると考えますが、企業という枠の範囲から出なければ、逆にその中で好きなことができる?今のところはここでやれる範囲がいい?あまりパンに関して「こういうものを作れ」というものがないから結構好きにやっていける?

松原さん:ええ。やっぱ次もそーゆー所を探すだろうし、まあ独立もない訳じゃないんで。
なんで今、自分が一生懸命頑張って雑誌とか出してもらっているかっていうと、どっかでずっと自分が走り続けながら、緊張感持っていいものを作り続けながらいうのを思っているんですよ。そうした時に、自分の店を持って、やっぱ資金がないからっといって落ちたくないですよね。でも資金は実際ないから、落ちざるを得ないんですけど。でもやっぱり、ある程度自分が納得いくお店を出したいんで、なんか商売だけで終わりたくない。
パンふぉ:選択枠のひとつということですね。
松原さん:そうですね。将来的に夢がかなえばですね別に店を持たなくてもいいかなっと。実はパン屋さんの店を持つっていうのは夢ではなく、目標かなっと思うんですよね。

『夢はぜんぜん違うとこにあるから。』


パンふぉ:目標と夢は違う?その違いはなんですか
松原さん:
時間をください。(一同爆笑)夢は『時間をください。』
パンふぉ:パンじゃなくてもプライベートでもチャレンジしてみたいことなどありますか?
松原さん:プライベート・・・。やってみたいこと・・・。結婚ですかね。(一同爆笑)冗談だけど・・・。

なんですかね。やってみたいこと・・・。やっぱ時間がほしいかな。時間があったら結構いろいろ・・・BBQとかやってみたいですね。外でBBQとかやるとウマイですよね。友達大事なんで、友達となんかできる時間を作りたいですね。
パンふぉ:今は友達とBBQに行く時間もない?
松原さん:
ないねー。
パンふぉ:では夢は時間を作ってパン以外のことをしたい??
松原さん:
ホントの夢はあるんですけど、まだちょっと・・・叶いそうになるまで、まだちょっと言えない。
パンふぉ:松原さんにとってパンとは??
松原さん:多分僕が一番自分を表現しやすいもの。やっぱ入っていけるし、試作とかしてて入っていっちゃうんすよね。でーこれだったらというものを出す。見てもらう。

パンふぉ:最後に座右の銘を教えてください。
松原さん:
座右の銘ですか?!なんだろう。じゃあ。うちのオヤジの座右の銘なんですが・・・。
『実るほど頭を垂れる稲穂かな』
やっぱりナマイキな時があって、対人的にもなんかすごくうまく行かない、業界の先輩とかとも・・・。
今思うとやっぱり謙虚さがなかった。若いときだったからねナマイキなときもあるよっと言ってくださる人もいるけど。それはちょっと反省すべきことで。まあ明石さん(ブロートハイムオーナー)とか見て思うのが、すごい人なのに謙虚。で、若い人にも「あーどうも。こんにちは元気?」って言ってくれるっていうか、それは逆に言えば心に余裕があるっていうか。自分が例えばそうゆう評価をもらったりしたらいろんな事に感謝を
する。うーーん。謙虚であるべきっていうのは、しいて言うと!




今回のインタビューは松原さんのご好意でじっくりと時間をとって、本当にいろいろなお話を伺うことができました。まだまだ載せたいお話がいろいろあったのですが・・・。
インタビューの最中もお客様がお店に入ってくると、いち早く気がつき、「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」など大きな声でひとりひとりのお客様に声をかけ、試作パンの写真やら、松原さんのお店から最近独立することになったスタッフのお店の資料やら、手間を惜しまずその話題が出る度取りに行ってくださいました。人とのつながりをとても大切にしながら、自分のスタイルをしっかり確立してお仕事をなさっているそんな印象を受けました。恥ずかしいからと正面からの写真を撮らせて頂けなかったのはちょっと残念(~_~;)夢がかないそうになったら是非教えてくださいね!

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〜新着情報〜
5月26日MADUさんのスタッフが独立され東京都・国立東にパン屋さんをオープンされました!
名前はBienfait(ビアンフェ)。恵みという意味だそうです。松原シェフも応援しています。お近くの方は是非足を運んでみてください。TEL/FAX:042-572-5902